
マーケッターやコピーライターが、恐怖を煽って商品を販売するのは良くないことだと考えています。
なにも正義ヅラして言いたいわけではありません。仮に恐怖を煽ると成約率が高まるのだとしても、それと同時にデメリットもあります。損得で考えて、やるべきではないという結論になっただけです。
人の恐怖を煽る広告の話
結構前の話になるのですが、「老後破産」をテーマに商品のプロモーションをしている会社がありました。
「下流老人」という言葉もある通り、老後に年金だけで不自由なく暮らしていけるかというのは多くの人が気になってることだと思います。ましてや、破産するかもしれないという状況は、強い恐怖です。
コピーライティングの世界では、相手の感情を揺さぶるのが重要ということがよく言われます。ですので、そのプロモーションを考えた人の思考はなんとなく理解できます。
ですが、それを最初に見た時に何ともいえないもやもやした気持ちになりました。実際、そのプロモーションはうまくいったという噂話も聞いたのですが、納得し難い感情が残りました。
でも、今ならはっきり言えます。恐怖を使って人を操ろうという試みが「不快」だったんですね。
恐怖=生存本能
「進撃の巨人」とか「シン・ゴジラ」を見てると、恐怖がいかに本能的なものかよく分かります。大きいものに襲われるのは、誰だって怖いわけです。
たぶん、進化の過程で、捕食動物に襲われたときの記憶が残っているのでしょう。生き残るためには恐怖を避けるために素早く行動をとらなければいけません。
破産の話は、死には直結しないかもしれません。ですが、社会的な死という意味では、脳にとって同じようなものです。
だとしたら、前述のプロモーションが良い売上が出たのも理屈では納得できます。なにせ、恐怖を避けるための手段として、商品を提供しているわけですから。
ですが、エンターテイメントで「恐怖」を使うのは良いとしても、商品を売るために使うのはダメです。なぜなら、嫌われるからです。
ヘイトを集めると最終的に損する
だって、明らかに人を操ろうとしている人を信用できますか? 「これを買わないと祟りにあいます」なんて言っている怪しい人たちと同列に見られるだけです。
もし一時的に良い売り上げが出せたとしても、中・長期的に顧客との関係を考えると損です。売上が下がって、さらに強い恐怖を引き起こす広告を連発する悪循環にハマること間違い無しです。
それだけじゃありません。AdwordsやFacebook広告などの運用にも悪影響が出ます。というのも、ヘイトを集めるような広告を出し続けると、ネガティブポイントがたまっていくからです。そして、アカウント停止へ…。
商売をやる上で、ヘイトを集めてもたいして特にはなりません。メリットよりデメリットのほうが大きすぎます。
商品を販売する時に恐怖を煽るべきではありません。そうではなくて、「嬉しい」とか「楽しい」などのポジティブな方向に感情を動かすものを作るべきです。
追記:以前紹介したライアン・ダイス氏によるメッセージ作りの話ともつながってきますね。